痛快

 医師が処方する抗菌薬の最大43%は不要である可能性が、米オレゴン州立大学薬学部の研究チームにより示された。
 抗菌薬の過剰処方は2つの問題をはらむ。1つは、重篤な副作用を引き起こし得ること。もう1つはより重要で、世界で必要のない抗菌薬が頻繁に処方されているため、抗菌薬が効かない薬剤耐性菌が増え続けていることである。
 米ニューヨーク大学ランゴン医療センター医学教授Marc Siegel氏は、「抗菌薬は細菌による感染を治癒することはできるが、ウイルスによる感染には効かない。しかし、医師は感染がウイルス性か細菌性か判断できないときに、念のためとして抗菌薬を処方することが多い」と話す。また、患者が何であれ治療を求め、医師がそれに抗しきれない場合、患者を満足・安心させるために抗菌薬が処方されることもあるとする。
Siegel氏によると、抗菌薬の過剰処方により薬剤耐性菌は着実に増えていくが、新しい抗菌薬が登場する予定はないという。その理由を同氏は、「医師は1980年代に開発された抗菌薬をいまだに使用している。抗菌薬は病気のときのみ使用され、日常的に使うものではない。つまり、製薬会社にとって金儲けになる仕事ではないため、新たな抗菌薬を発見・開発する動機もない」と説明する。

 日本のこうした報告書は疫所を忖度したり、製薬会社にたかるかのような物言いが多いのだが、アメリカはその辺はいたって痛快だ。使う言葉の歯切れがいい。真実をオブラートに包み、隠した意図を遂行する陰湿な国民性とは違う。その国にして、その国の医師にして、それでもなお患者に忖度する医師がいるのが不釣合いだ。どこの国も感情としてはそんなに違いがないのか。国民性の違いはほんのわずかで、そのほとんどは共通項だらけなのだろう。
 最近は膀胱炎や咽頭炎にも実際には抗生物質は必要ないのではないかと言われだした。ほとんど青天の霹靂だが、実際に咽頭炎など自然治癒するし、膀胱炎も結構漢方薬で治る。随分前には薬局もサルファ剤を膀胱炎の方に出すことが出来たが、あるときから急に販売を禁止された。その後武器をなくしたと思って原則的には医師を紹介していたが、最近は病院に行かない方も増えて漢方薬を出している。そこで治った人は次回もやってくるから次第に漢方薬で膀胱炎を治すつわものが増えた。
 長い間、現代医療の隙間を埋めるような仕事をしてきてつくづく思う。自然治癒力って素晴らしい。僕などそのほとんどに助けられての仕事だ。だから若い人にいつも言う。若い時は、治らない病気などないよって。