厄場

 僕は気心が知れた人で、何種類かの漢方薬を利用していただいている方には、薬袋に名前ではなく用途を書くことが多い。漢方薬が気にいって頂き、大方の体調不良はまず漢方薬で治してみるという人も意外と多い。そうした人は家に幾種類かの漢方薬を揃えておくことになるから、その方の名前ではなく、用途を書いていたほうが分かりやすい。
 昨日もある方の薬袋に症状名を書いたのだが、書いている途中で果たしてこれでいいのかなと不安になった。無意識に使っていた言葉だが、漢字はあるのか、カタカナが適しているのか、カタカナとひらがなの両方を使うのかとわけが分からなくなった。そこで従前どおり「ヤバい時」に落ち着かせた。まさにそのタイミングで僕が飲めばいいような漢方薬だ。
 せっかく迷ったというか気付きをもらったのだから正式に調べてみようと思った。そこで今日インターネットで調べてみると、昔、牢屋や看守を表していた厄場と言う言葉が元らしい。語源は分かったが、その漢字を使っているのは見たことがない。ひらがなかカタカナだろうが、厄場いとなるとヤバいが正しいように思えるがやばいとひらがな表記しているものもあればカタカナにすべて変換しているものもある。現在では頻繁に使われる言葉だから
最近出来た、少々下品な言葉のように思っていたが、随分と歴史がある言葉なのに正直驚いた。
 ちょっとした疑問と言うか、戸惑いから得た知識だが、こうした好奇心もこの年になって出てきたものだ。懸命に生きなくてもよくなったおかげで気持ちに余裕が出てきたのだろう。若い時にこうしたゆったりとした好奇心に支配されていたら、もう少しは知識が増えていただろうに。有り余る時間の中でただ溺れていただけのような気がする。