容量

 やってまった。いずれ何かするだろうと思っていたが、到底まともではできないことだ。想像もつかないことだ。
 ある男性から「漢方薬が入っていませんでした」とメールが入って来た。薬袋だけが入っていて、肝腎の漢方薬が入っていなかったのだ。本人はびっくりされただろうが「単純ミスだと思いますが」と僕が気落ちするのを踏みとどまらせてくれるような表現を使ってくれていた。僕としては、書きたくもないメールを書かせてしまったことに心を痛めたが、その配慮ある言葉に救われた。
 毎朝、シャッターを開ける前にできるだけの薬を作っておくようにしている。全員が集まる時間帯には、それぞれの分担が滞りなく始められるためだ。漢方薬に娘夫婦の時間を割かすことは避けたいと思っている。
 その日も夜の間に入っていた注文をメールの着順に作っていた。まだクロネコの伝票をインターネットで印刷できる時間ではないので、箱に作ったものを入れ封をせずに待機させておく。何箱も早朝作るのが最近の日課だが、気持ちはいつも焦り気味だから、薬の袋だけ入れて、あて名をプリントアウトして完成品を置く場所に置いたみたいだ。
 頭はまださえているつもりだが、僕の肉体はすでに容量オーバーで怪しげなものだ。幸い今月からまた薬剤師が応援に来てくれることになったから、少しは容量をカバーしてもらえそうだが、もともとに自信がないのだから、どこまでカバーしてもらえるか心もとない。「心身ともに元気」問診中に僕がよく口にするキャッチフレーズから次第に遠ざかる僕がいる。