僕が小学校くらいのときから、牛窓に帰って店頭に立って数年間だから２０年近く働いてくれた女性がいる。当時薬局を手伝うのに資格等はいらなかったから、ごくごく普通のおばちゃんだ。今ではごくごく普通のおばあちゃんだが、ここ最近それが普通ではなくなり、有名人になりつつある。
もう立て続けに３回あったのだが、何気なくテレビをつけた瞬間、その方がテレビに出ていた。それも決まって台所で料理を作っている。レポーターらしき相手に、その料理について話している。どうやら牛窓に伝わっている郷土料理、特にご主人が漁師だったから、漁師飯が作れるという腕を買われているのだろう。このあたりなら同じものを作れる人はいっぱいいるが何故かその女性が選ばれる。今日薬を取りに来たときに、他に人がいなかったので色々尋ねてみた。
選ばれる理由にはわけがやはりあった。以前から毎週１回、近所の女性達が１０人ばかり集まって食事会を開いていたらしい。自分達が料理を作って楽しむのだから、腕も上がるというか伝承されて、マスコミにとっては都合がいいのだろう。そしてこんなに取材を受けるのだったらいつも台所を綺麗にしていないとだめだろうというと、個人の家ではなく部落の集会所を貸してもらっているそうだ。そして下世話な質問と断って「御礼はどのくらいもらえるの？」と尋ねてみた。するとある局はボールペン１本、他の局は５０００円と教えてくれた。さすがに食材の費用はもってくれるらしいが、低脳人にはあほくらい出すが、一般人はこのくらいで協力してもらえるのかと少しばかり不愉快だった。安く見られているもんだなと言う感想だ。言い換えると、いいように使われている。
もっとも本人は純朴そのものだから僕みたいにうがった考えは持たない。巨悪を支えるアホコミに協力などしなくていいと思うのは、僕だけだろうか。
