手作りのケーキと言ってもほとんどプロ並みのものを、夕方二人のベトナム人が届けてくれた。２年間同居していたいわば娘みたいなものだが、日本語が達者だから十分会話は成立する。３時間くらい話をして今帰って行ったが、興味深いことを言ったので披露する。ひょっとしたらベトナム人だけでなく、他の外国人も同じかもしれないから。
二人が本当に日本の生活で不思議がっていたこと。
日本以外の国では、悪いことをするのは、いかにも悪そうな人。ところが日本では、見かけが全く普通の人、優しそうで全然悪そうでない方が、人を殺したりする。このことが全く理解できずに、不思議でたまらないそうだ。
日本の力が落ちていると、１０年日本にいるほうは感じているらしくて、日本が安全だという神話すら崩れていると言う話からの展開だったのだが、恐ろしげな人を避けていればいいのではなく、ごく普通の人まで怪しまなければならない異常さを受け入れられないみたいだ。
確かに大量殺人をする人は、発作的な怒りに任すのではないから、おおむね冷静で穏やかそうに見える人が多い。秘めたるものを具現化するのに冷静な準備も抜かりない。彼女たちの印象は当たっている。
心のうちまで理解できないら、安易な推論は避けなければならないが、不平不満が口から何度も吐き捨てられていたら、引き返すことはできたのではないかと思う。誰とも話すことなく終わる日々が仮に長く続くと、孤独も人を切りつける刃物と化す。
日本５年目の娘が言った「お父さん、普通ですね」
