鹿の角

 今日、先生から荷物が2つ届いた。ずいぶん前に、先生の薬局にある生薬を処分するからいりますかと案内を受けたのだが、荷物を開けてみて驚いた。
 数年前に、先生が煎じ薬を作ることを止められた時にも同じような申し出を受け、たくさんの生薬を頂いたのだが、当時のは汎用生薬で、すぐに使わせていただいた。ところが今回のは全く趣が違う。僕は先生の薬局を見たことがないからいったいどこにあった生薬だろうと思った。恐らく、店頭に漢方薬局の雰囲気づくりのために陳列していたか、戸棚にしまい込んでいたかだと思う。というのは普段使うような生薬ではなく、僕も初めて見るようなものが多くあった。
 例えば大きな鹿の角。これは明日さっそく店頭の陳列に利用しようと思いついたほど立派なもの。なかなか手に入るものではない。韓国の方などが多く住む都会では高値で売れるだろうが、田舎ではそういった対象の方はいない。まず陳列用だ。目を引くと思う。サイの角も、結構高額だが、今それを治療に使うことはまずない。タツノオトシゴはちょっとした飾りになりそうだ。霊芝も一時はもてはやされたが、今は治療に用いることはないだろう。金色の亀の甲羅。普通の鼠色ではないから余計気持ち悪い。一番気持ち悪いのは、マタタビが羽を開いた姿の燻製。何に効くのか知らないが、とても薬には使えない。
 先生もどうして手に入れられたのだろうと思うが、有名な先生だから、漢方の会社などがお土産で持ってきてくれたものではないか。鹿の角には漢方の会社の名前が刻まれていた。
 僕にはこれらのものを受け継ぐ資格はないが、それでも僕を選んでくださったことに感謝する。今まで35年間教えてくださった知識だけで十分過ぎるだが、毎日鹿の角を目にすると、感謝の気持ちを新たにできる。

 

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