増幅

 毎日二つの問屋さんが1日2回薬を届けてくれる。最近は女性が活躍していて、ほぼ女性だ。穏やかで礼儀正しいから、むしろ歓迎されているのではないか。娘などは親しく話したり、野菜などを農家の方にいただいたときなどは、おすそ分けしている。
 毎日一度薬の情報を持ってくるのは男性だ。これもまた礼儀正しく、洗練されている。会社がどのような教育をしているのだろうと、知りたくなるくらいだ。ただし時には行き過ぎて慇懃な感じを受けるのは僕だけだろうか。そこまでしてもらわなくてもと、こちらが引いてしまうこともある。
 ただ、今日のある場面はさすがだと思わされた。
 毎日運ばれる薬を入れるケースは折りたたむことができて、小さくはなるが、さすがにカウンターの後ろに置いておくには「ないほうがいい」くらいだ。毎日幾箱かずつ2回運んできては前回置いて帰った箱を持って帰るから、常に3つか4つの箱が滞ていることになる。
 今日はなぜかいつも来る男性セールスが荷物もってきた。荷物を僕が受け取った後、伝票と合わせていたのだが、その間セールスは娘と薬のことで何か話していた。僕が点検を終わったのと、娘との会話が終わったのがほとんど同時だった。振り返った彼が僕が薬を箱から出し終えたのを見つけると「それも持って帰りましょうか」と言った。おそらく彼は何も考えずに口に出したのだと思う。ほとんど反射的だったから。たった一度、ケースが目の前から消えることがどうしたと思うかもしれないが、やはりカウンターの後ろに隠れているとはいえ、何もない通路は気持ちが良い。僕にとってはそれが半日のことでもうれしいのだ。
 何気なく声をかけてくれたのだと思うが、えらくそのことに感動し、すぐに娘に「すごいな」と言った。娘も分かったみたいで同意してくれた。なんでもない行動の中に、輝くものを見つけた時は感動も増幅される。置いていくケースを、ただ置かずに帰っただけの話なのに、僕の心には感動を置いていった。

 

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