即断

 僕より少し年上の男性が半年前から漢方薬を取りに来ている。普段、年齢の割には大きな車(クラウン?)に乗っているが、今日新たな車に乗ってやってきた。僕はその車を見たのは初めてだったが、娘は何度かその車で来た時に応対していて、格段驚いた様子はなかったが、僕はすこぶる興味がわいた。
 あらかじめ電話で注文を受け作っておいたので、本来なら薬を渡すだけでいいのだが、入ってくるなり男性を外に連れ出し、その車を見せてもらった。
 男性も自分の趣味に興味を持たれたのでいやな気持ではなかったのだろう、快く薬のことはほったらかしで、説明、それどころか実演までして見せてくれた。
 車のマークが外国製だったので、それとオープンカーだったので「ジャガーなの?」と思い付いたまま尋ねると「これはプジョーです。ジャガーだと高級すぎて手が出ませんよ」と教えてくれた。僕にはその違いは判らなかったけれど、鮮やかな青色で、初めて身近に見たオープンカーなので高級そうに見えた。
 僕はオープンカーは、雨の日は幌をかぶせたようにして走るから、事故の時には人間が露出して守られないから危険だなあと思っていたが、なんと金属の屋根が収納庫から出てくる。それも形だけのものでなく、本来あるべき構造物がそのまま出てくる。触っても見事に硬くて何ら遜色はない。これなら横転してもハンディーではないなと思えた。
 屋根部分が収納箇所から出てくる様子は、ロボットが組み立てられる様子を連想させた。あるボタンを長押ししていれば2段階の動きを経て屋根部分とサイドが出来上がる。
 僕は、年齢と乗っている車の乖離にも興味を持ったので、オープンカーを乗る理由を尋ねてみた。すると男性は「面白いから」と答えた。単純明快だった。僕ら世代で面白いことなど多くはない。ただお金を出すだけで手に入るものでそれを実現できるなら、もろ手を挙げて賛成だ。そのあけすけのない直球の理由を真似てみたいと思った。手の届くもので面白いものがもしあれば即断もありだと、背中を押されたような気がした。 あの笑顔を何歳になっても保つことができるなら。

 

室井佑月「後継、いらない」
作家・室井佑月氏は、自民党の傍若無人ぶりに辟易する。
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 ボクシング漫画の『はじめの一歩』のワンシーンが浮かんだ。たしか、不動のチャンピオンがいて、そのチャンピオンに勝ちたい男と、そのチャンピオンのようにいつしか自分もなりたいと願う男、どちらが強いかという話だった。もちろん、強いのはチャンピオンに勝ちたい男だった。
 2019年参院選広島選挙区の公職選挙法違反事件。自民党から河井陣営に流れた1億5千万円問題はこのままうやむやになるのだろうか。5月18日に岸田文雄政調会長がBSの番組に出て、こういっていたけれど。「1億5千万円を出したその後、それを何に使ったか、これを明らかにしてもらいたい」飛べない男と揶揄(やゆ)されるが反知性主義には見えない岸田さんが立ち上がった。あたしはそれを良い兆しとして受け取った。
 日本が今のままでいいわけないでしょ。公文書の廃棄や隠蔽(いんぺい)、国会軽視で重ねる嘘、ゆがめられ改正までいきそうな憲法、壊れた三権分立、権力の私物化etc……。
 目に見える感じでダメになったのは、7年8カ月に及んだ第2次安倍政権からだ。総裁に返り咲いて以降、6回の衆参議院選挙で勝ち、仲間や友達を優遇し、それ以外の人間には、勝ったのだからなにをしてもいいだろうという感じであった。しかし、その傍若無人さは、新型コロナウイルスには通用しなかった。マスコミは恫喝(どうかつ)できるがコロナはできない。
 安倍さんは再び体調不良で総理の座から退くことになったけど、本気でそう思っている人はいるのか? だとしたら、なぜ医師の診断書はなかったのか? アベノマスクの滑稽さは? 自分の選挙のために1年延期と決めた東京五輪も思うようにいきそうもなく、すべてが面倒臭くなったんじゃないか? そして、ここに来て、19年参院選広島選挙区の公職選挙法違反事件に、安倍さんが深く関わっているから、ともいわれている。というか、安倍さんが関わっていない方が不自然だろう。河井案里氏は、元々、安倍さんの私怨(しえん)から、立たされた候補なのだから。
 安倍応援団的なある月刊誌で、安倍さんはインタビューを受け『ポスト菅』として4人の名前を挙げたという。その中の一人が岸田さんで、27日、彼は記者団にそのことを問われ、「評価されているのであれば光栄なことだ」と答えたみたいだ。ほかに名前の挙がった人も「光栄だ」と答えたようだが、一瞬でも岸田さんに期待して損した。
 いつから自民党の総裁は指名制になったのか? というか、今でわかるでしょ、あの人の後継なんていらない。それを望むのは、国をガタガタにしたあの人とその仲間だけじゃん。

 

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