教訓

 これは恐ろしい。僕にも可能性はある。いやあった。あんなに恐ろしい映像を見せられると金輪際やめとこうと思った。
 僕は焚火が好きだ。あの草が燃える匂いも好きだし、視界が煙でさえぎられるのも好きだし、煙が目に染みて涙を流すのも好きだ。実利的にも不要物が灰になって体積を喪失するのも好きだ。
 かなり神経質に、無風の日を選び、周り何十メートルに燃えるようなものがないところで今まではやっていたが、ついこの間初めて、寮として貸し出している古民家の庭で焚火した。冬で草が枯れて、抜くに抜けず、焼いたらすっきりするし、焼いた所には草が生えにくくなるから一石二鳥なのだ。安全を期すために、レンガを積み重ね1メートル四方の即席の炉を作った。その中に枯草を集めて火をつけたのだが、枯れ草は20メートルくらい離れている山の斜面に続いているからなんだか心配になった。最後は水をかけて完全に消したつもりなのだが、そのつもりが不安になり、数回確認のためにその場を訪ねた。出かける前にお何回も鍵や火の元を確認する作業と同じだ。
 ほんの少々の枯れ草を焼くためにすごいストレスだった。燃やしてきれいにしたい、でも心配。葛藤があり答えを出せないままでいたところに、関東の2か所での山火事だ。庭で枯れ草を燃やしていたことから飛び火したらしいから、強烈な教訓になった。
 仕方ないから、燃えるゴミの日に黄色のごみ袋に詰め込んで出すことにした。効率は悪いけれど、余計な不安を抱えなくて済む。今や日本のいたるところが手つかずで、伸び放題、枯れ放題。導火線のように火は伝わるだろう。あのニュースはおそらく日本中の僕みたいな変わった趣味の人間に教訓を与えてくれたと思う。

 

https://www.youtube.com/watch?v=qV-y9n7loGk