健康食品

 いつ頃からだろう、薬局で健康食品なるものを売り始めたのは。ずいぶん前のような気がする。最初はクロレラくらいだったかな。何に効くのか分からないが、当時としてもべらぼうな値段で、僕は得たいが知れないのと、そんなに高いものを売った経験がないから手を出さなかった。その後続々と薬局がそう言ったものに手を出し始めたが、得意な人は得意みたいで、僕が事務方をしていた漢方薬の勉強会からそちらに走った人もいる。何に、どういった根拠で効くのか薬剤師だったらデータを渡してもらって判断するが、健康食品だからデータはないし、何に効くとも言えない。確かに食品だから当然何にも効かない。いいだろうと言うイメージを売り手も買い手もともに作り上げ、その間で高額なお金が移動する。
 いつしか薬局の中にもそうした商品のカリスマが誕生して、漢方薬には身が入らなくなっていった。どうしてそうなったかの一端を今日ある方から教えもらった。薬業界に通じていて多くの情報を持っている方だが、よく売る薬局は会社から謝礼や旅行で接待攻勢に会うらしい。
 例えば商品を200万円仕入れれば、100万円の高級時計をもらえたり、ヨーロッパに視察と銘打った旅行に招待されたらしい。いったいメーカーはどのくらい儲けるのだろうと驚くような話だ。所詮健康食品だから材料代も研究費も検査費もしれているから、もとはほとんどただ同然?200万円買ってもらったら100万円景品を付けても儲けるのだから。
 さすがに最近はテレビで大手が禁断の果実を求めてその分野に進出したから薬局でべらぼうに高いものは売れにくくなったらしい。いつまでも雰囲気だけでお金をもらえるように甘くはないだろう。悪意があったのかなかったのか知らないが、何年もいい目をしてきた薬局は評価を実はかなり落としている。カリスマを謳歌していたある薬剤師がある時しみじみ「漢方薬を大切にしておけばよかった」と漏らしていた。
 最近ある医療関係の方から、漢方薬を売りたいと相談を受けた。仲間がやたら勧めてくれるらしい。僕はその時「一時の儲けのために、貴方は今まで築いた自身の技術の信頼をなくするよ。プロに徹したほうがいいよ」と助言した。彼は「そう言われて助かりました。自分でもそう思っていたんです」と礼を言ってくれた。
 人には向き不向きがあるが、僕はニッチな専門家として歩むことがあっていた。

 

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