人並み

 6時ごろ偶然時計を見て思い出した。「今日から6時半閉店なんだ」と。
 来店される方の動向を見ていて、6時半を過ぎてくる人がほとんどいないことに気が付いたのは11月頃だった。昔は町外に働きに出ている人が帰宅途中に寄ることが多かったが、町外にドラッグストアが出来、そう言った人が減ってきた。そして数年前に、牛窓にもドラッグストアが出来、ますますその傾向を強くした。
 そのおかげで、どこででも売っている昔からの薬を僕の薬局が取り扱う必要がなくなって、そのためにわざわざ開けておく必要がなくなった。現在僕の薬局の仕事は、どこでも扱っていない特殊なOTC、自分の薬局で作っている治療薬(自家製材)、病院の処方箋調剤、そして漢方薬だから、皆さん目的をもってやってきてくれる。来るか来ないか分からない人を待つ必要がなくなったのだ。
 思えば休むことなく365日、12時間働くところから始まって、「人並み」が手に届くところまでやってきた。日曜祭日を休むことができ、1日の労働時間が8時間半(表向き)。45年かけて変えてきた。両親の何十年も休まず働き続けた姿を見ているからなんだか申し訳ないように思うが、次の世代にそれを求めることは出来ない。せめて世間並みの労働時間で済むようにして完全に薬局を渡したい。それがまさに実現直前まで来た感がある。
 またそれは同時に僕にも福音だ。むしろ僕の方に恩恵があるのかもしれない。やる気はあるけれど僕の筋肉が悲鳴を上げる。そんな日常が続いていたから、結果的には自身に救いの手が伸びたようなものだ。この貴重な30分の短縮時間を体の回復に使えるといいなと思う。家族にも薬局を利用してくださる人にも意味ある変更でなくてはならない。