練習

 日曜日、朝の9時からまず東に走り、それから北に向かって走り、午後4時から、今度は南西に走り日が暮れる前に岡山市内にたどり着いた。一体どのくらいの距離を走ったのか分からないが、その区間だけでも4時間は走っている。ところがその移動中、いわゆる昔ながらの薬局は一軒も見なかった。いくつ市や町を通り過ぎたのか分からないが、ひょっとしたらどの町でも僕の薬局のような形態のものは潰れてなくなっているのかもしれない。  ところが逆に、どこの市や町を通っても大きなドラッグストアがあった。それも何故か決まったように複数軒あった。どちらが先に出店し、どちらが後から出店したのか経緯は分からないが、こんな商圏の中でお互いやっていけるのだろうかと心配になるような競合状態だった。聞けばより大きなドラッグストアが後から出店し、より小さいのを駆逐するらしいが、なかなか熾烈なものだ。恐らくその煽りを受けてどの町からも僕の薬局のような形態が消えていったのだろう。あれだけの規模のものが来られたらクシャミ一つで吹き飛ばされるだろう。  ただ医者と上手くやっていけたところは調剤専門で生き残っている。生き残るというより以前の形態よりははるかにいい目をしているだろう。何もしなくても医者が患者を運んできてくれるのだからこんなに楽なことはない。いつまでこんなにいい目をさせてくれるるのか分からないが、業界の長いものに巻かれる立ち位置が功を奏している。 実は牛窓にも遂にドラッグストアがやってくるらしい。これで牛窓の暮らしやすさが一気に向上する。不思議かもしれないが僕の家族は全員喜んでいる。今まで何か欲しいときには週末まで待って岡山市に出かけ買っていたが、これからは必需品が手軽に手に入る。こんなに町民に喜ばしいことはない。後は岡山県最後の昔ながらの薬局だったと過去形で言われないようにするだけだ。  来年の今頃、風の便りで「あの店主は全国をライブツアーで回っている」なんて噂を立てられないように今日から・・・歌の練習をする。あれっ!