停電

邑久町はバケツをひっくり返したくらいの雨なのに、牛窓は全然降っていないからびっくりしました」と言う女性は、薬を運んできてくれる若い女性。毎日、岡山から邑久経由で牛窓に入るルートを回っている。
 邑久町牛窓は隣り合わせで、峠を一つ越えるだけだ。丘と言ったほうが正しいような「山」一つでこんなに天気が違うのかとしばしば驚かれるが、山のせいではないのかもしれない。牛窓が海岸線に延びる町と言うのもあるのかもしれない。よくは分からないが、なぜか天気は違うことがしばしばらしい。
 その後1時間くらいたってきた他の問屋の若いセールスは、停電で開かなくなった扉を手で開けて入ってきた。入ってくるなり薄暗い中で僕を見つけて「停電ですか?そこの信号が着いていなかったのでおかしいと思っていました。邑久町は全然降っていないのに、牛窓に入った途端凄い雨だからびっくりしました」と言った。やはりここでも邑久町との違いがテーマだ。
 牛窓の天気を喜んでくれた女性配達員の出て行ったあと1時間後くらいの会話だが、今年初めての雷がどこかで落ちたのだろう停電になった。雷が鳴ると梅雨が明けるという言い伝え通りだ。気象衛星の精密な映像で、かなり詳しく天気は予知できるが、方や1000年前か2000年前かわからないが、言い古された言葉と一致する。
 毎日のようにニュースで大雨の被害を伝えるが、そこに出てくる地名の多くに僕の漢方薬を飲んでくださっている人が住んでいる。無機質にプリントアウトされる宛先が、途端に具体的な景色として現れる。こんなところで暮らしている人なんだと、急に親近感が増す。
 災害に巻き込まれてはいないかと心配するようなことは幸いないが、安全を完全に担保されるようなところは、現代の日本ではないから、梅雨と台風シーズンは気が滅入る。

 

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