職業

 福井県あわら市の製薬会社「小林化工」が製造した爪水虫などの皮膚治療薬(経口薬)に睡眠導入剤の成分が混入し、服用した患者1人が死亡。同社は厚生労働省から承認された手順に反し、製造工程で成分をつぎ足していた。この過程で誤って睡眠導入剤の成分「リルマザホン塩酸塩水和物」を補充したという。本来入れるべき原料は高さ約1メートルの紙製の円筒に入っていたが、睡眠導入剤の成分は四角いブリキ缶に保管されており、成分名やロット番号も明記されていた。薬品を保管場所から運び出す作業は本来2人1組で薬品を確認しながら行うのが同社での決まりだったが、担当者が1人で行っていた。この担当者は同社の内部調査に対し「7月ごろの作業で、はっきりと覚えていない」と話したという。

 病院の処方箋で調剤する時には「人は必ず間違いを冒すもの」という前提で仕事をするようにと教えられた。初心者というよりちょっと慣れてきたころが危ないとも言われた。僕など全く調剤の経験がないまま分業に突入した世代だから、いまだ処方箋調剤は恐怖で、はやばやとそこから引退した。最初は病院勤務の経験がある女性薬剤師二人に助けられ、現在は娘夫婦がやっている。
 
 田舎の薬局だからめちゃくちゃ難しいような処方箋は回ってこないが、それでももう僕はついていけない。無理をして「やってみる」より「僕はもうついて行っていない」と正直に告白して、手を出さないようにしている。
 小さな田舎の薬局がやってしまいそうなことを製薬会社がしたと言うのだから意外だった。結構人間の手でやっているんだと正直驚いた。ほとんど機械化され人間の作業など機器を眺めているだけかと思っていたが。薬を入れ替えたりするのは確認も作業も人の手なのだ。
 担当者はすごい後悔をしていると思う。規則を守らなかったのにはいろいろな理由が想像できるが、結果以外問われまい。悪人でも罪人でもなく、ごく普通の働き手なのだろうが、謝っても謝っても許されない結果になってしまった。一歩間違えば人を傷つけてしまう職業の恐ろしさを見せつけられた。良い教訓になるなどと、その方のこれからの人生を思うととっても言えない。ありとあらゆる分野で被害者が出ない、そんな夢のようなことを思ってしまう報道だ。