発掘

 ・・・ 小学校の同僚の女性教諭に睡眠導入剤を入れたシュークリームを食べさせ、急性薬物中毒にしたとして、大阪府○○署は14日、傷害などの容疑で、○○を書類送検した。教諭は一時意識不明となり、入院を余儀なくされた。容疑は職員室で、市販のシュークリーム1個に睡眠導入剤を混入して女性教諭に食べさせたとしている。教諭は食べて間もなく意識不明となり、病院に搬送。9日間入院した。同署によると、女は家族に処方された導入剤の錠剤を持参。職員室での会議中に自ら買ってきたシュークリームを配り、教諭にだけ錠剤入りのものを渡した。「1錠を割って中に入れた」と供述している・・・

 よくある事件ではあるが、読み手によっては結構深刻な内容を含んでいる。まずこの事件で使われた睡眠薬が恐らくもっとも汎用されているものだと言うこと。名前を書けばびっくりする人が多いのではないか。僕の薬局でも処方箋でこの睡眠薬を飲んでいる人は一杯いる。ほとんどの人は何年も飲んでいる。次に飲ませた錠剤の数が1錠で、普通に処方される錠数そのものなのだ。一度に沢山飲ませて昏睡させたと言うなら分かるが、不眠のために飲むごくごく普通の錠数で意識不明になり9日も入院したというのだ。不眠を訴える人が毎日飲む量で意識を失ったのだ。恐らく何百万人もの人が毎日服用しているポピュラーな睡眠薬は、実はこんなことが出来る薬なのだ。習慣性はありません、翌朝の持ち越し効果ありません等と、よいことづくめの説明を信頼してみんな安心して飲んでいるのだろうが、実はこのくらいのリスキーな薬なのだ。  そもそもこんなに睡眠薬が必要なのだろうかと、処方箋調剤を手伝いながら思うことはしばしばだ。いつからこの国の人達はこんなに眠ることにこだわり始めたのだろう。朝は朝星夜は夜星で寝る間も惜しんで働いてきた国民が、どうして眠ることに拘るのだろう。一所懸命働いて死んだように眠っていた国民が、どうして不眠に悩むのだろう。 僕はこのところ、薬が保険で安く手に入る構造こそがこの国に病人を増やしているのではないかと感じている。製薬会社の思惑が簡単に反映しているのではないかと思うのだ。単なる不調や老化が即病気にさせられてしまう。ちょっとだけ仕事を休ませてもらえば回復するだろう不調も、働きながらでは病気になってしまう。まるで病人を発掘しているような意図を感じてしまう。本当のことが表に出ない構図は原子力村と似ている。