連発

 僕は精神的な病気の悩みで相談に来た人に、病院の薬をやめてくださいなんて決して言わない。その種の薬を急に止めると悪性症候群と言う副作用が現れる恐れがあると、息子にいつか教えてもらっているからそれを守っているし、そもそも病院にかかっている人をコントロールする権利はお医者さんだけにあって僕にはない。だから病院にかかっている人は基本的には元気にする漢方薬を作り、主訴はお医者さんに任せる。  ただ、この方は勝手に自分で止めたのだから、僕が責任を感じることはない。そもそも薬を飲むかどうかは本人の責任範囲だ。2週間前に来たときは、後ろ頭がもやもやする、寝汗が出る、テレビも見られないなどと訴え落ち込んでいたが、今日来たときは感謝の言葉を連発してくれた。と言うのはわずか5ヶ月前までは元気一杯で有名な人だったのだが、股関節の手術で入院し、その時病院で眠れないからといってもらった睡眠薬が次第にエスカレートして、安定剤3種、睡眠薬1種を飲むようになったのだから本人としては返す返す悔しかっただろう。それまで薬なんか飲んだこともなかったのにと恨めしそうだった。  だからその勢いで睡眠薬以外の薬を3種類止めてしまったらしい。幸いなことに副作用も出ずに、解決したかった症状の6割くらいが改善したらしい。今度はもっと改善するという自信があるのか3週間分持って帰った。  偶然その女性が僕の薬局に相談に来なかったら、数種類の精神病薬を続けて飲んでいるに違いない。医者はそれらに罪悪感を感じないから、いつまでもその種の薬を飲み続けなければならない。と言うより下手をすると、薬は増えるは強くなるはで、生活の質は落ち続けるだろう。脳の中に入っていく薬から解放されるとそれだけで、気持ちいいらしい。何事も自然がいい。