果たして僕に治す事が出来るか保障はないが、それでも少しは役に立てる。せめてそのようにしないと昔からの薬局は食ってはいけない。それが証拠に、もう僕と同じ形態の薬局はほとんど化石状態だ。生き残っているのが不思議。あるいは笠岡のカブトガニか。 見るからにしっかりした女性が、あるトラブルでやってきた。一目でそのトラブルはわかったが、15年間治らないらしい。病院でほとんど同じ薬をもらっている。どのように説明を受けているのか尋ねても、そのしっかりとした女性は答えることができなかった。お医者さんにお任せしているのか諦めているのか、そのしっかり具合とはその点だけは結びつかなかった。僕は見た瞬間、原因と養生はすぐに頭に浮かんだ。勿論漢方の処方もすぐにわかった。本来ならそんなに日数を要しなくても満足してもらえるようなトラブルだが、なにぶん15年間お医者さんが単純に1つのものを出し続けているからややこしくなっている。その副作用と言うか習慣性が怖いが、患者さんは意外とおおらかだ。僕ならその種の薬の連用に警戒感を持つが、医師も患者も持っていないのだからおおらかだ。ただ、それはそれでいい。しかし15年間ほとんど毎日不快な症状を持っている人に、なんら解決方法を説明していないのには驚いた。それでもお医者さんは高収入なのだからやはりいい仕事だ。僕だったら何かしら貢献できなければ2週間で見捨てられる。 僕のところに相談に来たのだから、15年を経て改善していないということだ。僕は原因とその原因を体からなくす方法を伝えた。原因さえなくなれば根治すると言うか、それ以外に根治はない。いたずらに強い薬で押さえ込んでもそれは隠れているだけだ。蓋が取れたらいつでも再燃する。 40年も体調不良の方を見続けていると、改善のコツなどが自然に会得できる。毎日何十人の人と病気について話をしてきたのだから、実践的な知識が身につく。教科書とは違うかもしれないが、結構役に立つ。こんな知識残しても仕方ないが、朝から夕方まで同じようなことを患者さんに喋っているから、娘夫婦も同じようなことを患者さんに言っている事がある。田舎の薬局だから何も次世代に残してあげられるものはないが、何にも書かれていない、患者さんから教えられた活字にはなりえない知識なら残せる。それで風邪が1日早く治ればいいし、腰痛が1ヶ月早く治ればいいし、心のトラブルが半年早く治ればいい。