生真面目

 ある方が漢方相談にやってきた。2つの解決したい症状があった。
 数か月、よその薬局で漢方薬を飲んでいて、見せてくれた指示書に、コーヒーやアイスクリームなどを控え、朝は味噌汁云々と書かれていた。もっと多くの禁止食品が書かれていたがすべてを思い出すことはできない。どれもこれも誰もが愛するものだった。「誰もが」が言いすぎれば「僕は絶対好き」なものばかりだった。
 そう、思い出した。スマフォも気をつけろと書かれていた。現代の若者にとってはつらいことばかりだ。
 僕は解決すべき症状の原因が患部にあるのではなく、心にあるだろうと推測した。そこで自律神経を整える漢方薬を1週間分だけ作らせてもらったが、唯一その方にお願いした養生法は「好き放題」
 その方はコーヒーが大好きで、コーヒーを断つように言われたことがかなり負担になっている。せっかくの楽しみが削がれていて、スマフォまで禁止されればうつうつと過ごさざるを得ない。
 僕はお医者さんはどう診断されたのと尋ねてみた。すると若くて元気なのだから問題はないと答えてくださったらしい。僕と全く同じ考えだ。僕は自由に暮らせば治ると思ったから、禁止事項などお願いしない。むしろ自由に過ごせば、交感神経の緊張が取れ、気持ちも体もリラックスできる。緊張で作った症状だから緩めば治る。
 僕も若い時には、多くを患者さんにお願いしていたかもしれない。(いや、やっぱりしていない)ただ、歳とともに考え方も経験が変えてくれ、お願い事項もおおらかになった。自然に備わった人間の治癒力の大きさを見せられてきたからかもしれない。
 僕らは所詮しがない薬剤師。お医者さんが太鼓判を押してくださったような方に、不健康を意識させるようなことをしてはいけない。職業に生真面目すぎて患者さんの笑顔を心配顔に変えてはいけない。

 

https://www.youtube.com/watch?v=XAZ-IJv6-6s