加担

 ある日ある方の電話相談を受け、処方を決め送る約束をした後値段を伝えた。すると電話の向こうで驚いていた。驚いた理由は何と値段が安すぎたからだ。その方は僕が提示した値段の2倍以上を予想していたらしい。どうやら東北の方では岡山県の数倍の値段がするらしい。東北の方々の所得がそれだけ高いのか、それだけの値段を提示できるほど漢方薬の知識が優れているのか、はたまたそんなに贅沢がしたいのか。
 西洋人が漢方薬を飲み始めてから、また中国人が豊かになってから、漢方薬の原料が仕入れるたびに上がるようになってきた。だから昔のままの値段設定は出来ないが、それでも僕が頂いている値段で出来ない処方はほとんどない。許可を取って作っている漢方薬の中で朝鮮人参を含むものもあるが、それでも教えていただいた漢方薬のかの地での相場には到底届かない。
 高い家賃を払い、従業員の給料を払い、ブランドで身を固め、高級クラブに通い、豪華海外旅行に行き・・・それらを患者さんに支払わせているとは思いたくない。僕など勉強不足で見たこともないような高額な漢方材料を使っているのだろうか。それともお金持ちだけいらっしゃいなのか。
 格差がどんどん広がっている今、せめて自分が携わっている領域では、それに加担したくない。