大学入試

 ポルトガルリスボン大学のAdilson Marques氏らは、成人の筋力と抑うつ症状との関係を調べた。その結果、「筋力は抑うつ症状リスクの低下に寄与することが示唆された」著者らは「筋力の向上を目的とした介入は、メンタルヘルスを改善し、うつ病を予防する可能性が示唆された。メンタルヘルス改善とうつ病予防の戦略に、筋力の評価と向上を用いることは可能である」としている。
 何を言っているかと言うと、そう言えばとうなづけるのだが、筋肉もりもりのうつ病は珍しいってことだ。
 確かに身の回りを見ても、患者さんを診ても、筋肉もりもりの人が処方箋でうつの薬を取りに来る人は少ない、いやいないし、僕の漢方薬を飲んでくださっているうつうつの人も、もりもりはいない。総じてスリムな方が多い。それもほぼ決まって色白。どう見ても筋肉がありそうにはない。
 大学の先生の発表は難解で権威があり、素人には縁遠いことが多い中で、この問題提起と結論はすっと腑に落ちる。現実が証明してくれていて、なぜそれに気がつかないと言うか定義できなかったのかと悔やまれる。そこが研究者と凡人の違いなのだろう。
 この定義からしたら、筋肉をつければうつ状態から脱出できると言うことだ。うつ病の薬を飲むよりはるかに自然に近い。精神状態が不自然になったのだから、気持ちを自然に戻すには自然の中で戻すのが一番だ。できれば自然の中で行動的に過ごし筋力を回復させるか、それができなければ仕方がない、機械を使って筋力をつけるのも一つの方法だ。
 長寿社会を、特に晩年を上質に生き抜くには、筋肉を衰えさせないこと。心身ともに元気は、たんぱく質が決め手なのだ。粉物大好きの戦後生まれにとっては意外とい難しいテーマだ。出来そうで出来ない、大学入試みたいなものだ。