配達員

 正確かどうか自信はないが、ウーバーと言う名前の配達専門の会社があるらしい。お店から料理を受け取って、お客さんの家まで自転車などで配達するらしい。取り分は1件当たり300円から700円くらいだと言っていた。NHKの特集番組で仕入れた知識。
 最初その会社の名前を知ったのは、猛スピードで疾走するから事故も時に起こってニュースで取り上げられていたからだ。特集番組でも事故のことを扱っていたが、ウーバーの配達員は個人事業種だから自己責任らしい。会社は知らぬ存ぜぬで通るみたいだ。
 僕は配達員の取り分が少ないから大変な仕事だなと思いながら見ていたのだが、頑張れば僕などよりいい収入の人もいることがわかってほっとした。と言っても僕の収入は極端に低いから僕より上でも、良いとは言えないのだが、少なくとも僕より上なら質素に暮らせば何とか生きていける。
 そういった情報が流れている時間帯はなんだか安心して見れていたのだが、最後の方で、コロナの影響で失職したような方が、同業者として現れ始め、仕事の取り合いみたいになり始めていることを知り、心は穏やかでなくなった。発注元の店の前で鉢合わせする配達員たちを見るのがつらかった。
 そして何よりもつらかったのは、おそらくこのシステムを考案し起業した人には莫大な財産が転がり込んでいるって事実が見えないことだ。彼らが1日10数時間自転車をこごうが、仕事の連絡が入らないか今か今かと待とうが、事故にあっても、それが加害者でも被害者でも自己責任と言う無情、そうした正に会社を支える人たちに対して氷のようなシステムを作ってこの世を謳歌しているだろう人物が見えなかったことだ。
 システムを考えた人の能力には感服するが、僕には女王バチを養うためにかいがいしく動き回る働きアリしか目に留まらない。