追体験

 実はこの数日、全国でかなりの不都合が続いている。千葉の方々の1000分の一くらいの不便を追体験しているようだ。もしこの1000倍の不便を体験しろといったら早々出来るものではないから、痛みを少しでも分かち合うにはちょうどよいタイミングだったのかもしれない。ただ不便を感じている人の数といったら相当数に上ると思うが。
 3日前の午前11時頃だったと思う。出荷を担当してくれている息子の嫁がインターネットで発送業務ができないと心配顔で教えてくれた。僕のほうがインターネットが使いこなせるわけではないが、挑戦してもできない。こういったときには機械音痴の自分を疑うのが常だけれど、さっきまで使えていたものが使えないのだからさすがに僕のせいではないのではと思った。案の定その2時間後、発送業務の画面にクロネコヤマトから原因不明のトラブルが発生したという案内が送られてきた。
 これはかなり業務に支障が出る。全て手書きで行わなければならない。かつては手書きだったからその用紙は備えていたのだがこの数年その出番はない。不安を抱え探してみると5枚くらい残っていた。これでは足らない。そこで営業所にもらいに行くと、営業所も普段利用することがないから、手持ちが数枚しかなく、全てもらってきた。翌日一部システムが復旧したみたいで、早朝はつながった。ところが企業が仕事を始めるころからは全くつながらなくて、時間をおいて挑戦してくれと言う案内ばかりに行き着く。まるで企業の相談窓口のつながらなさみたいだ。そして同じことが今日も起こった。ただ今日はもっと状況が悪化して、営業所に手書きの用紙が全くないのだ。インターネットで業務の効率が格段に上がってその恩恵を享受していたが、いざそのシステムが故障すると哀れなものだ。もしもの時のことが全く想定されていなかった。東電の原子力事故と同じだ。
 多くの企業が1日どのくらいの荷物を発送しているのか分からない、あわせると100万単位?1000万単位?の荷物が毎日出回っていると思うが、そのすべてが手書きになるのだからその労力はどのくらいのものになるだろう。今日来たある漢方の会社のセールスは、昨日は倉庫に派遣されてずっと宛名を書いていたと教えてくれた。
 どうしようかと途方にくれていたときにふと思いついたのが郵便局だ。ひょっとしたら郵便局も代金引換のシステムがあるのではと思ったのだ。電話で尋ねるとやっぱり同じようなシステムがあった。早速妻が手続きをしいくつかの荷物を発送した。これで荷物を届けることができないという最悪の状況は脱した。なんとなくボデーブロウのようにストレスを感じていた2日間だったが、やっとかなりの割合で解放された。
 スマホどころか携帯電話も腕時計も持たない生活を続けているので、アナログのままで暮らしているが、結構こうした古風な道具も必要なのだと再認識した。スマートで便利だけでは太刀打ちできない状況もあるのだ。若夫婦が、10月以降も現金払いの今のシステムを変えないと決めた。僕が付いていけないのを慮ってくれたのではない。現場で何の努力もしないで、人様が働いて得た金を数%毎回ピンはねするシステムが許せないのだ。パソコンの前で腰掛けているだけの人たちが莫大な金を集めることができるシステムが許せないのだ。別にそんな会話をしたことがないのに親子って結構似るものだ。
 レジも今までのものを使うそうだ。それでいい、全て汚部や汚泉の仲間達が濡れ手に泡で儲けられるようにするために政治は動いているのだから。