本心

 午後2時頃は、2回目のクロネコヤマトの配送時間帯だ。その時間に今日も漢方問屋から荷物が届いた。ほぼ毎日問屋から漢方薬が入ってくるが、今日の荷物に僕は全く心当たりがなかった。朝すでに荷物を受け取っているから午後に荷物はないと思っていた。 それでも大きな荷物が実際に届いているのだから姪に開けて貰った。すると姪が商品を整理しながら、最近仕入れた荷物にとても似ていると言い出した。そして過去の伝票をとりだして比べていたがすぐにこれだと言って、ある日付けのものを僕に見せてくれた。なるほど2点の商品を除いて後は同じだった。姪が同じ荷物が2度届いたことを色々推理してくれたが、結局は問屋に直接尋ねてみることにした。受付の女性に間違ってはいないかと尋ねると、FAXのコピーを見ながら今日10時の日付で注文を貰っていると返事が返ってきた。FAX用紙にこちらが送った時間がしっかりと残っているらしくて、それ以上追求することは出来なかった。まるで夢遊病者のように僕は意識がないまま注文を出したことになる。ただ今日は若い2人が処方箋の患者さんで手一杯だったから、僕は漢方薬を作り続けていた。手を休めて漢方の注文をしたら当然覚えている。それなのに全く記憶がないのだ。 おかしい、おかしいと悩んでいる僕に再び姪が、「そのFAXのコピーを送ってもらったらどうですか」と助言してくれたので、もう一度問屋に電話して、その旨を伝えた。自信に溢れている先方はすぐ送ると約束してくれたのだが、FAXより早く電話が入って来た。何でも5日前に注文した僕のFAXを何かの偶然で九州の支店に流したらしい。それを受け取った支店は、間違って送ってきたから岡山の問屋に送り返してきたらしい。だから今日の日付の、実はすでに先週荷物が届いている伝票が復活したのだ。  あれだけ自信を持って先方に言われるとさすがの僕も、ひょっとしたらと思い始めていた。不思議な出来事ではあるが、僕の仕業の確率を100%うち消すことは出来なかった。「わからん、わからん」を1日100回ではすまないくらい連発する母を最近見ているから、僕にもわからん病が始まったのかと少し心配したが、完全に相手の偶然の出来事のせいだった。「良かった、お袋より僕のほうが早く特老(特別養護老人ホーム)に行くのかと思った」と言うと姪にメチャクチャ受けた。さては本心ではそう思っていたのか。