被害者

 そのコマーシャルに、なんだか違和感があったので、翌日回ってきたある漢方薬の会社のセールスに尋ねてみた。すると彼は調べてみますと約束してくれ、今日電話で僕の疑問点に答えてくれた。   僕は漢方薬の宣伝かと思ったのだが、彼は飴の宣伝だと言っていた。コマーシャルの中で漢方薬か薬草と言う言葉が出てきたから僕は耳をそばだてたのだが、秋田県で栽培していると言うようなニュアンスだったと思う。きれいな水が沸く秋田県で薬草を栽培したら、それが売りになるのだろうが、ちょっと待てよと言いたい。  確か福島原発の事故の後、厚生労働省から、甲信越、静岡から東、北は青森までの薬草は使わないでくれと言うお達しが出たと思う。命令か自粛か知らないが厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長通知と言うような長ったらしい名前の人からの通達だ。普通こんなに偉い人からの通達が出ればどの企業も守る。医療機関などは遵守だ。あれから4年近くなれば、企業などと言う巨大な営利集団ともなれば、役人まで馬鹿にして、いつものように奇声、いや寄生、いや既成事実を積み上げて、そんな制限などりんご崩し、いやバナナ崩し、いやぶどう崩し、いやみかん崩し、いやなし崩しにして、もうけに邁進しようと言うのだろうか。セシウム半減期は30年くらいと記憶しているから、まだほとんど放射線量は減っていないはずなのに、もうけのためなら内部被爆で、何十年も被爆させ続けるなんてことなどなんら気にならないのだろう。わが子や、わが孫達には絶対させることができないことでも他人には平気でする。全ては営利、銭のため。血も涙もない経営者の為に、何処にでもいる庶民が血と涙を流すのだからおめでたいものだ。  僕は製品化されている漢方薬は台湾の製薬会社から仕入れ、そこの会社では作れない処方を日本のある会社から仕入れている。その会社は放射性物質が未検出のものしか使っていない。勿論西日本で採れたものだ。いわゆる基準以下のものではない。基準など事故の後勝手に増やして生産者を守ろうとして作ったものだから、そんなものでごまかされてはかなわない。少なくとも事故の前と同じ、未検出な薬草しか口にすることは出来ない。なぜなら僕は物分りの良い被害者などにはなれないから。