褒美

 このところ背中の筋肉の緊張が限界に近づいている。立っているか腰掛けているか、そのどちらかで12時間くらいは仕事をしているから、もともと腰、首、肩は調子がいい日はない。そこで毎日リハビリ的な運動が欠かせない。ところが最近は腰ではなく背中が痛くなる日が多い。凝っている状態だと思う。今日も相変わらず不愉快な重だるさを感じながら仕事をしていた。時々2階に上がりマッサージ機に横たわると一瞬は楽になるが、仕事に復帰すればすぐに元に戻る。強めの鎮痛薬を飲んでも不快さが半減ぐらいが限度だ。
 ところが今日ある女性患者さんからの電話を受けた後、急に背中の痛みがひいた。それは過敏性腸症候群漢方薬の注文電話だったのだが「症状を忘れている」と言うのだ。わずか2週間前の報告では、2,3分に1回のガス漏れなどが原因で涙を流したり、死にたいなどと思ってしまうと言っていた。それがそれらの症状が消えたと報告してくれたのだ。
 毎回、電話注文の方だから人となりは手に取るように分かる。上品で優しそうで、決して暗くはない。きっと素晴らしいお嬢さんだろう。話していて気持ちのよい女性だ。そんな人がこの理不尽な症状から脱出できそうなのだから僕もとても嬉しい。その嬉しさが、ひょっとしたら僕の心の緊張を取り除いてくれたのではないか。いわゆる交感神経の亢進状態から、副交感神経優位の状態にしてくれたのではないかと思うのだ。まるで無形のご褒美のようなその女性の報告が僕の背中の緊張を取ってくれたのではないかと思うのだ。そうでないとあのタイミングで急に治ったりはしないだろう。ただ残念なことに、余りに長期にわたる背中の凝りのためにその1時間くらい前に煎じ薬を作って飲んでもいたのだ。どちらが効いたのか、あるいは相乗作用か分からないが、とりあえず久々に午後からは快適に働けた。ただ今日の良い変化は仕事の達成感であってほしい。漢方薬ならいつでも作れるが、こうした一緒に喜ぶことができる経験は、いつもいつもできるものでないから。僕を含めてリラックスが苦手な現代人には参考になると思う。リラックスが下手、リラックスできる環境を与えられない、頑張りすぎは命を削る。