笑い

 世の中に勝てないものは色々あるが、これもその一つだ。  吉本興業の漫才を1時間見て笑うだけで血糖値が17も下がり、同じくリウマチ患者の痛みが病院でもらう消炎鎮痛薬よりよく効いたと言うデータがある。笑いの効用を研究したデータだ。これによく似たことは自分自身でも、又薬局に来られる人でも時折経験する。科学的なデータは僕らには持てないが、何となく感覚で分かっていた。 思えば笑っている時は全くの無防備だ。目をつぶって笑わなければならない時だってある。笑いの壺に入った時など床の上を転げ回らなければならないほどだ。このときの交感神経のゆるみようや激しいのではないか。逆に副交感神経が優位になっていて、一気に血流を促進し、筋肉を緩めて理想的な体の状態になるのではないかと想像する。その状態をもし持続できるとしたらどんなに健康は簡単に手に入ることだろう。この状態を漢方薬でいつも作り出したいと思うが効果はいかがなものか。測る道具がないから効果は結果で判定するしかない。薬が効けば少しは緊張をとれたとし、取れなければまだ緊張状態にあるだろうと推測する。  誰がどの様に調べたのか知らないが、人は平均1日17回笑うそうだ。笑う動物は人間と猿、それも子供の猿だけらしいが、大人になると猿も笑わないなんて聞くと、笑える。いやいや笑ってはおれないか。40歳から50歳になると人間でも1週間に1度も笑わない人が20%もいるらしいから。進化的に猿に近い人が20%いるのか、笑えないくらい日常が辛いのか、笑う相手がいないのか、性格的に生真面目なのか。どれが原因にしたって問題だ。四六時中緊張状態だと病気へまっしぐらだ。  僕は姑息な手段だが、自分の漢方の未熟さを笑いで補っている。薬局に来て1回も笑わずして帰したりしない。もし1度も笑って貰えなければ僕が悲しくなる。僕が病気になる。笑ってくれるとこちらも笑えて、お世話をする気力体力を与えられる。笑いは双方向の癒しだ。良い気をお互いがキャッチボールできる。だから「交換」神経というのかな。