故障

 年末に超機械音痴の僕が2つの機器の故障に度肝を抜かれた。同時ではなかったのが救いだったが、そのことで考えたことがある。
 どちらの機械の故障も僕の仕事にとっては結構致命的なのだが、片一方は根性で直し、片一方は代替品を格安で買うことができた。どちらもよい経験ではないが考えさせられることもあった。年末の超忙しい時を選んだかのような、とんでもないハプニングだった。
 最初に壊れたのは分包機だ。漢方薬は現代薬と違ってとても湿気やすいので、精密な機械だとすぐに湿気が災いして壊れてしまう。だからなるべく古い機械を見つけて使っていて、シンプルで壊れにくいが、さすがに年季が入っているから時に故障はする。ただ、構造がシンプルだから自分でも治す事ができるような故障も間々ある。今回も以前経験したのと同じ故障だったから自分で挑戦してみた。ところが28日の午後4時頃だから、ひょっと自分で直せなければ年を越してしまうと気がついて慌ててユヤマへ電話を入れた。具体的な故障具合を電話で報告すると、いろいろ修理の手順を教えてくれた。ところがデシタル故障番号を向こうが確認すると、もうそれは自分たちが修理に赴いても交換する部品がすでに製造中止だから、直すことはできないと言った。僕はかつて同じようなことになって、自力で直した経験があるあるから、プロに来てもらえれば直ると思っていた。ところが相手は「古くて部品がないからもう修理は不可能」の一点張りだった。古いから諦めて代替品を買う気があるのなら、僕も強くは言えるのだが、どうせ漢方用だから新しい機械を買ことはできない。メーカーの思惑とは真反対だ。片や買えない、片や売りたいだから折り合えるところはない。ただ、僕の薬局の病院用の分包機は1台数百万円もして、そろそろ買い替えの時期を迎えている。それは向こうも分かっているだろうが、故障のタイミングが彼らにとっては最悪のタイミングだったのだろう。あと1時間でお正月休みの長い休暇が始まると言うところでの僕の電話だから、彼らのモチベーションからしたら最悪のタイミングだったに違いない。ただし、この時間帯の電話なら過去にも何度かしたことがあって、そのつど修理に飛んで来てくれた。そもそも分包機の修理は、医薬分業を支えるのには必須の条件だ。それを分包機メーカーが軽視することはありえない。彼らがかたくなに修理不能を繰り返した唯一の理由は「たいぎ めんどう」だと思っている。電話だから顔は見えないが、話しぶりで分かりすぎるくらい分かった。
 結局来てくれない事が分かって娘婿がそこから修理に挑戦してくれた。そして30分後には見事に直してくれた。素人が、スマフォ片手に取り扱い説明書を見ながら直してくれた。この事実をユヤマには言っていないが、分かればどういった反応を示すのだろう。電話で対応したのは僕で、どのように相手の意思を感じたかは娘夫婦には詳しくは言っていないから、次の機器選定でユヤマを選ぶかもしれないが、僕の頭にはもうない。僕はスポーツでも何でもトップよりそれらを追いかけるほうが好きだから、前回も前々回も前園を選ばなかったが、次回は前園にしようと思っている。
 2つ目の故障は秤。秤と言っても薬局の秤だから、0.01g単位の精密なものだ。20万円近くすると思う。これが壊れても、薬局にはいくつかあるから代用はきくが、なにぶん不自由だ。量るたびに秤を移動させることになる。これも出来るだけ早く手に入れたかったが、29日だから会社は休みに入っている。いろいろ早く手に入る方法を探っているときに、妻が台所で使っている電子秤を持って降りてくれた。今までまじまじと見たことはなかったが、ふと「これで十分」と気がついた。煎じ薬用だから1g単位で十分なのだ。漢方薬でも0.1g単位で計るものはあるが、それは粉薬に限られているし、それ用の秤は健在だ。そこで早速その夕方、ダイキに行ってみると、大皿でしかも0.1g単位まで量れるうってつけのものが売ってあった。それも3000円もしない。早速買って帰り、我が家の分銅で検査してみると正確だった。料理用だと思うが、こんなに精密なものがこんなに安いのかと感心した。
 日常業務の中で一番心配なのは、パソコンが壊れること。そして調剤機器が故障すること。もっとも僕が苦手とするものばかりで、致命傷になりえる。運よくそれぞれに得意な方と知り合っているから今までなんとかなってきたが、今回の経験で、片一方については不安を増した。