烙印

 漠然としか聞いていなかったから詳細は分からないが、いやまだ詳しくはわかっていないのだろう、母親が逮捕されたことだけがニュースで伝えられていた。なんでも生後間もない赤ちゃんにミルクを与えないで衰弱死させたと言うのだ。理由はミルクを買うお金がなかったからだと言う。上に3人のお子さんがいたみたいだが夫はいないみたいで、実の父親と同居していたみたいだ。
 もし家庭が豊か、いや並みの経済力さえあればこうした悲劇は当然防ぐことが出来て、母親が犯罪者の烙印を押される羽目にはなっていなかっただろう。こうした貧困こそが原因の悲劇は結構起こっていて、単に「悪者」が逮捕させるだけで真相は伝えられない。子供をおいて働くことも出来ないから、貧困に陥るのはなかなか避けられない。助けを求めた人に経済力がなければ、脱出は難しい。公共の力を借りればいいのだろうが、知識がなければ接触することも思いつかないのではないか。
 結婚も出産もほぼ博打だ。いい目が出るか悪い目が出るか、分からない。どちらも将来の保証にはならない。むしろいつそれが牙をむくか分からない。現代はそうしたリスクとして考えなければならない時代だ。今日手にしているものが明日は崩壊して瓦礫だけが残る。そんな危険と毎日が隣り合わせなのだ。
 子沢山の若い母親の逮捕のニュースを聞いて、堕ち行く国の行く末を見る。一握りの成金が世を謳歌し、大多数の「並み以下」が自爆で滅んでいる国の姿。石のひとつも投げないで朽ちていく哀れな姿。