納得

 何となく感じていたことだけれど、言われてみれば納得だ。 教会にはフィリピンの人がやってくる。仕事で短期間玉野市に滞在する若い人もいるが、日本人と結婚した女性も多い。その中で幼いお子さんがいる人がいて、ミサにも連れてくる。そのお子さん達をまるで我が子のように、日本在住の女性は勿論、若い短期間滞在の男女も可愛がる。人間関係を知らなければ、誰が父親で誰が母親か分からないくらい大切にする。それに応えて子供も人見知りをせずに誰にも甘えていく。  こんな光景は指摘されなければ「何となく」で終わってしまうが、フィリピンによく行く人に言わせれば、ごく当たり前の光景なのだそうだ。家の垣根は勿論、心の垣根もまるでないかのようにお互いが親密に関わり合いながら生活しているらしい。他人の子供に声をかけて暴力をふるわれたというような、この国の道徳回帰を煽る乾いた人間関係はない。 同じような光景は、かの国の若い女性達の間でも見られる。小さな子供を見つけると自然と寄っていき、声をかけている。その母親とも片言の日本語で話を始める。本当かどうか分からないが、平均年齢が28歳というのを聞いたことがあるかの国では、恐らく子供がうじょうじょいて、誰彼となく可愛がり大切にしているのだろう。子供が溢れんばかりにいるところでの当たり前の光景なのだろうか。少子社会になると、一人の子供に対する気持ちの集中が起こり、大切「過ぎる」ものになってしまったのだろうか。  この国の日常と何となく違う雰囲気をかもし出すのは、こうした人口比率に原因があってのことなのだろうか。それとももっと根元的な、単なる優しさの問題なのだろうか。望んでか、望まなくてかわからないが、孤立して生きる人が多いこの国では、今では珍しい光景だ。