道連れ

 「今、働いている所がもう崖っぷちで倒産寸前です。最後のあがきでいろいろやってみていますが、持ち直すことは難しそうです。いろいろ相談されて精神的に辛い事はありますがなんとか頑張れていることがとてもありがたいです。以前の私なら真っ先に体調がボロボロになっていたと思います。人間関係にもたくさん悩んだ職場でしたが、なくなると思うと寂しいですね。いつまで続くかわかりませんが。。。頑張ります。」

 体調を報告してくれたときに、ついでに書いていてくれた文章だが、この下りを読んだときに、大袈裟に言えば、日本人の持っている善良な部分を何となく感じた。会社の倒産、失業、職探しなどのこれから控えているだろうことの悲嘆が出ていないのだ。寧ろどちらかと言えば他者を思いやる気持ちが前面に出ている。  日本人の日本人らしい長所だが、最近はこの特性を備えている日本人は少ない。毎日のようにエセ強者が我が物顔に振る舞うのを見せられて、不愉快になることばかりだから、こうしたごく普通の人達の優しさが余計に印象深い。多くを求めずに、懸命に生きている人達の何気ない心情に心を打たれる。胡散臭いタレントや醜く歪んだ政治家どもの顔を見るたびに、こちらの品格まで道連れにされているみたいだが、巷には逆に道連れになりたいような人達がいる。