週2回、ボランティアで殺処分を免れた犬猫の世話に行っている。いつも自分が一番早い。その朝、未だ薄暗い時間、施設の入り口にダンボール箱が置かれているのを見つけた。施設は公表していないから、一般の人には分からないはずだ。なんだろうと思って箱を外からたたいてみるが何の反応もなかった。そこで開けてみることにしたのだが、蓋は通気性の良いテープでとめていた。だから簡単に開けることが出来た。ただ、何となく気持ち悪かったので恐る恐る少しだけ開けてみた。すると箱の底に対になった目がいくつも見えた。  怖いから先輩ボランティアを携帯電話で呼び出した。するとすぐに駆けつけてくれて、一緒に箱を開けてみた。すると生後1ヶ月は経っているだろうか子猫が9匹入っていた。どれもまるで死んだように動かないが、目は開けてこちらを見ている。ただどの猫も目やにで見にくそうで見えているのかどうか分からない。  自分たちの手に負えないので又指導的立場にある人に携帯電話で相談をした。するとお湯に濡らしたタオルで猫を拭いてあげること、その後注射器でミルクを与えることなどを指示してくれた。こうした状況に遭遇した経験がないのでテキパキとした指示に勇気をもらった。その結果子猫たちは元気になった。  これは僕の話ではない。時々勉強に来る薬剤師が話してくれた内容だ。素人の僕など、残酷なことをするなと単純に憤ってしまうが、彼女は違っていた。ダンボール箱に封をするテープがすこぶる通気性の良い物を使っていること、ダンボール箱の底に毛布を敷いていたこと、赤ちゃんがお乳を必要とする時期を過ぎてから捨てていることなどから、飼い主?捨て主?は優しい人という評価をした。殺処分をなんとか回避したい飼い主の意図が感じられるのだそうだ。  教えてもらわなければこの様な日常が善意の人達の営みとして僕らのすぐ近くで粛々と行われていることに気がつかない。悪意に満ちた過剰な演技が幅を利かす昨今の政治状況の程度の低さとつい比べてしまう。どちらが檻の中にはいるべきか。