酸素室

 確か「酸素室」と言ったと思う。
 保護猫を世話している薬剤師が、その子たちの漢方薬を作りに来た。ある猫が、獣医からはもうなすすべもないから、食事も与えずそのまま安らかに見送るようにと指導を受けているが、後ろ足が立てなくても前足で姿勢を変えたり、チュルチュル?と言う美味しいエサは食べるから放ってはおけないと看病に頑張っている。白血病だから回復は難しいのだろうが、1日でも長くと言うのが、飼い主の気持ちなのだろう。ましてボランティアで多くの捨てられた犬や猫の世話をしている人だから、愛情も深い。
 今はどうしていると尋ねた時にその「酸素室」と言う言葉が出てきた。意味は簡単に理解できるがそのようなものを民家に作るのだろうか不思議に思っていたら、貸し出し用のコンパクトなものがあるらしい。酸素吸入ではなく、酸素の小屋なのだ。それを聞いた時になんて行き届いているのだろうと思った。その分野のことに全く疎いので、そうした手当てができるようになっている設備の整いぶりに感心と言うか安堵した。愛らしいペットの最期もまた、人間と同じように安らかにと願わずにはおれない。無心に漢方薬を作っている薬剤師の背中を見ながらそう思った。