物の哀れ

 その女性薬剤師が最初に言った言葉が「鳴いていました?」だった。最初に出る言葉としてはいささか「らしくなかった」ので違和感があった。ただし、その問いの理由が分かってからは「さすが!」と感嘆しきりだ。
 月に2回ほどやってくるその薬剤師は、保護犬の世話をするボランティア組織に属していた方で、犬や猫にとても詳しく、僕の所に動物に飲ませる漢方薬の勉強に数年通って来た。とても漢方知識の習得にも熱心な方で、その時に得た知識でいまだお世話をしている犬たちがいるみたいで、その犬たちのために漢方薬を作りに来る。僕はどちらかと言うと動物が好きではなかったから、犬猫の話題のすべてが新鮮で勉強になった。漢方の知識を与え、ペットの知識をもらう、そんな関係だ。
 午後やって来てすぐに僕は、子猫を保護していると告げた。当然彼女はすぐに興味を示したが、その表情とすぐに口から出た言葉とのギャップがあった。ただし、その言葉にはとても重要な意味を含んでいて、僕らが保護したことが正しかったのだと確信を持てたし、その説明になぜか涙を誘われた。当然そんなことで目をウルウルさせるのはみっともないから平静を装っていたが。
 「駐車場の物置の下の僅かな隙間の中から顔をのぞかせ鳴いていた」と答えると「それは助けを求めていたんです」と教えてくれた。あんな小さな動物が、巨大な人間を恐れることなく助けを求めたのだと教えられ、痛々しかった。母猫に捨てられどのように生きていたのだろうと思いを馳せると急に涙が出てきた。年齢を重ねると物の哀れに関しての感受性ばかりが高まってきて、もともと弱い涙腺が緩みっぱなしになって来る。

 

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