法治国家

 業界関係者と話をしていて、思いがけないことを聞いた。田舎でのんびりとやっていたら蚊帳の外だから、驚きの内容だった。  漢方薬のエキス剤(煎じ薬でないと言うこと)が1日分が600円くらいするらしいことは聞いていたが、そしてそれ自体もあり得ないと思っていたが、その時にしばしば併売される健康食品が、効果を期待したものでなく、漢方薬と縁が切れたときに引き続き消費してもらえるものとして勧めるらしい。もっとも健康食品に効能などないからそもそも病気の時に販売すること自体がおかしいのだが、そして買うこと自体がおかしいのだが、その真意が薬局と縁を切らせないためだと言うから、大した策略だ。いや才能だ。僕などしばしば薬は止めるために飲み始めると言って、治れば止められると説明し続けてきたけれど、その理屈から言うと、治れば患者さんが減って営業的には痛手だ。ただし実際には、治ってもらえればたいてい同じような病気の人を紹介してくれるから、増えもせず減りもせずで何とかやっていける。高額な、しばしば治療薬より高額なものを薬局と縁を切らせないために勧めるのでは、ぼったくりだ。そんなこと田舎では絶対出来ないし、そもそも健康食品なんてこの世になくてもいいと思っている僕には、縁のない話だ。  ところが胡散臭いものを見抜く能力が極端になくなった現代人を相手に、暴利をむさぼって来たその手法も、そろそろ見透かされてか、あるいは健康食品会社に客を取られてか勢いがなくなったらしい。僕に言わせれば自業自得だとも思うし、墓穴を掘っただけだとも思う。僕なんかが追いかけてきた先輩達が消え、訳の分からないものや、胡散臭いものが隆盛を誇っている。それを支えているのは膨大な誇張された情報の前で固まっている無知な人達だ。合法という名の悪意に身ぐるみ剥がされる人達の姿が見える。この国は法治国家という名の呆痴国家だ。