紫雲膏

 面白くて興味深い話を聞いた。  ある製薬会社のセールスは女性だ。毎月かなりの距離を走り回っていると思う。大阪や北九州を担当したときの交通マナー事情などを面白おかしく話してくれるが、昨日の話は特に面白くてなおかつ役に立った。  運良く去年から実家の岡山を拠点にセールス活動をしている。実家にはミニチュアダックスと猫を飼っていて、お互いが仲が良くて、猫が犬の世話をしたりするそうだ。僕はその話題だけでも面白いと思ったのだが、興味深かったのはそのことではない。  先月やって来たときにお母さんのあかぎれや手荒れのために、僕の薬局で作っている紫雲膏を買って帰った。効果の程は自信あるのだが、なんとその紫雲膏をえらく二匹が気に入って、容器を舐めるのはもちろんだが、ひび割れを治す為に塗っているかかとを舐める始末だそうだ。それも寝ているときに布団に潜り込んで舐めたりするから、仕方なく靴下を履いて寝ているそうだ。「いい匂いがするのでしょうね。動物は絶対不自然なものを口にしませんから余程安全なもので出来ているのでしょうね」と彼女は言ったが、正にその通りだ。作っているときからいい香りが薬局の中に立ちこめるし、そもそも材料は最高級品を使っている。材料のトウキも日本産だし、ごま油はメチャクチャ高級で百貨店にわざわざ買いに行く。その甲斐が人間ではなく犬と猫に評価されたのだから・・・・嬉しくも何ともない。