火傷

 笑うに笑えぬが、やはり笑う。自分のことだから遠慮せずに笑う。 ありがたいことに11月に沢山作っていた紫雲膏がもう底をついたから今日慌てて作ることにした。処方箋の患者さん達は、冷たい雨が降っていてもいつもどおり来るだろうけれど、OTCの患者さんはそんなに来ないだろうと踏んでいた。だから雨が降っている間に作っておこうと取り掛かったのはいいが、雨のせいで薬局に来るのが大変な患者さんが多くて、配達の依頼が相次いだ。紫雲膏作りは油を使い、最高170度まで上げるから、料理をしない僕は結構緊張する。だから二人で作るように心がけているのだが、配達の依頼で妻も姪も出て行くばかりだ。そこで独りになった僕は、トウキとか紫根とかを揚げたり灰汁を取ったりで、付きっ切りでガラス棒を駆使する。火が心配で気持ちばかりが焦り、どうしてもかき混ぜるスピードが速くなりすぎて、時々油がはねる。そして手の甲に当たる。その度に「あつっ!」と声を上げるが、それでも丁寧にしようとか、何か防護の策を考えようとはしなかった。早く作って今日のテーマを一つ片付けたかったのだ。油が跳ねて手の甲に恐らく小さな火傷をいくつか作っているだろうが、そんなときにこそ紫雲膏が良く効く。在庫が一つもないから皮肉なことに塗ろうに塗れない。火傷の薬を作るために火傷をするなんて・・・笑うに・・・笑う。