逆手

 「なんじゃこりゃあ」周りに人がいなかったから思わず本音のあまり美しくない言葉が出た。クラシック音楽界の常識を知らないから驚くことを許して欲しい。  岡山駅に隣接する場所にイオンが開店したから、車であのあたりに近づきたくない。田舎者は渋滞と言うのをほとんど経験しないので、車がなかなか動かないなんてのは耐えられないのだ。だから母を見舞いに来てくれた姉たちを駅には迎えに行かず、少しだけ歩いてもらってシンフォニーホールの下で待ち合わせすることにした。少し約束の時間より早く着いたので、なんとなく辺りを見回していた。するとチケット売り場の窓ガラスに、「当日券あります」と案内が張られていた。14日に当日券となるとすぐに「第九?」と頭に浮かんだ。見ると確かに第九のポスターと一緒に貼ってある。で、冒頭の「なんじゃこりゃ」が出たのだ。  僕の疑問は、さすがシンフォニーホールで行われる第九のコンサートでも売れ残りが出るのかと言うものと、あるいは必ず当日券と言う物を残しておくものかと言うものだ。我先にと今まではチケットを買ってきていたので、拍子抜けした。拍子抜けと言えば赤穂のチケットを申し込んだときに、係りの人がどうせ満席にはならないと言って、郵送してと頼んだのに断られたことも驚いた。まあ、その緊張感がないのが赤穂の第九のいいところだが。  何せ、クラッシックのにわかファンの僕だから分からないことばかりだが、歳を重ねたことを逆手にとって、図々しく楽しんでいる。