爪楊枝

 またまた僕は凄いことを発見した。もうかの国を訪れなくても紀行文が書けそうだ。 今日、新しいかの国の若い友人のアッシー君になって、岡山市のショッピングモールを案内した。簡単な昼ご飯を一緒に食べたのだが、食後にその中の一人が僕に爪楊枝をとってくれた。そこまでは若い女性なのによく気がつくなと感心しただけなのだが、その後驚いたのは、4人全員が自分たちも使い始めたことだ。僕はラーメンを食べただけだから爪楊枝は必要なかったのだが、彼女たちが食べたのもラーメンかうどんだったので、まして若くて綺麗な歯をしているので、どう見ても必要なさそうだ。それがそろいも揃って一様に爪楊枝を口に入れる姿は、日本ではあまり見かけない光景だ。彼女たちのおじいさんおばあさん世代なら分かるが、いや一歩譲って両親世代ならまだ分かるが、若さで充実しきっている女性達には余りにも不釣り合いな光景だった。以前ブログにも書いたが、外股歩きと同じくらい衝撃的だった。  このグループは今日が初めてだったが、そう言えばしばしば行動を共にしている二人も食後に爪楊枝を使う。二人だけだったので若干の違和感はあったがそんなに衝撃的ではなかった。今日は4人という迫力が決定的な印象を与えたのだと思う。  ただ今日の驚きの目撃は、彼女たちを否定するものではない。むしろ半日行動を共にして、異国の地で懸命に働いている姿に触れて愛おしさが溢れてくる。嘗て幼い息子と娘を育てていた頃の感情に似ているなと、店内に消えていった彼女たちと僕を隔てた自動扉に映る自分の姿を見て思った。