三種の神器

 なになに、牛窓に又わざわざ食べに来る店が増えた? 今朝は遠くから漢方相談に来てくれた方が多くて、その中の一人が、「漢方薬を作って頂いている間におそばやさんに行ってきていいですか?」と尋ねた。牛窓に来たのは初めてらしいから「すわきのラーメン屋さんではないの?」と聞き返したがやはり日本そばのお店らしい。ラーメン屋は知っているが日本そばの店があることは知らなかった。「11時から限定20食らしいですから、遅れないようにしないと」とさっきまでの深刻な病気の説明の顔とはうって変わって、表情が明るい。ああ、ここでも今流行りが飛び出す。例の限定なになにだ。ちょっと不自由な場所、古民家、限定が今や繁盛の3種の神器だ。そうしてみれば僕の薬局にはこの要素は何もない。県道に面した牛窓では一番便利な場所。鉄筋コンクリートのモダンな建物。漢方に限定して、それらしく見せ高額なものを売りつけるのがいやだったから何でも屋さんを常に目指している。 これで分かった。僕には繁盛の為の3種の神器どころか、衰退の為の3種の辛気・・・くさいが備わっているのだ。まあいい、このところの僕のモチベーションは、僕の薬局に来てくれた人に牛窓で買い物や食事を楽しんで貰うことだから。結構そうした人が増えて、薬局を出るときに帰りとは反対の方向に出ていく。長いこと自分の仕事ばかりにかまけていたから少しはこれで町に恩返しが出来るかもしれない。