備えあれば憂いなし

 基本的には恐怖の行き当たりばったりなのだが、何故か今回だけはそれなりに用意していた。 休日と言ってもとりたててすることがないから、漢方薬の注文を受けても何ら負担はない。それよりもすることが出来て時間は潰れてくれるし、気持ちも少しはしゃんとするから有り難いくらいだ。連休だと言うことに急に気がついた4人の方から漢方薬の注文があった。皆さん休み明けでいいですと気を使ってくれているが、カルテをみると完全に薬が切れてしまう人もいた。そこで漢方薬を作ろうとしたが分包器という薬を1包ずつ分ける機械が動かない。素人なりに手を尽くしても全く動かない。もっとも元々中古品を譲ってもらったもので、譲ってもらってからももう10年やそこらたっているのでいつ壊れても不思議ではなかった。途中で細かい修理は何度もしてそのたびに修理代を払っていた。こんな経緯があれば誰でもいざというときのために何かの手だてはするだろうが、僕は本来はそんなことはしないタイプだ。ところがことこれに関してだけは数ヶ月前に手配していたのだ。ひょっと壊れて会社に修理を依頼しても、最低半日は漢方薬を作れなくなってしまうから。この数ヶ月、使われない大きな機械が場所をとっていることに若干のストレスは感じていたが、今日やっと日の目を見た。  連休で会社に連絡もとれない情況の中で、よくも4人の方に漢方薬を送れたと思う。備えあれば憂いなしは大の苦手だったのに、やはり漢方薬で人をお世話することが好きなんだろうか。備えあっても憂いばかりの人生だったから、いつの間にか備えなしに変わっていったが、今度のことを教訓に何事にも備えなければならないと改めて思った。明日はかの国の女性達をどこかに連れて行ってあげると約束している。何処に行くかはまだ決めていない。明日、車に乗ってから考えよう。