ドイツの森

 今日の誕生日をかの国の料理でお祝いしてくれることをなんとしても避けたくて、今日牛窓から二人の若い女性を連れ出した。それこそ昨日の続きだがブルーハイウェイを東に走り出してから、姫路に行こうか、それとも備前から北に上ろうか迷った。結局は車の運転に自信がないからなるべく田舎の方を目指すことに決めた。何人もの方からのんびりしていいところと言う風評をきいていたから、そいつの森、いや、あいつの森、いやドドイツノ森、段々近くなった、ドイツの森に行くことにした。朝の10時に出て、午後5時に帰った。その間のことを書いても仕方がないから、二つの印象に残った出来事を書く。 足で漕ぐ船で小さな池を20分間楽しむことが出来る。僕はかの国の二人と妻が楽しそうに漕いでいるのを時々写真に撮っていたが、一番印象に残った光景は実はそんなことではない。あるお父さんが3人の小学生くらいの子供を連れて船に乗っていた。お父さんと一番幼い子供は懸命に船を漕いでいたが、上の二人の男の子はそれぞれがゲーム機を持って、それからほとんど目を離さなかった。その光景に目を離さなかった僕は、彼らが上陸して次の遊具に移動する間もほとんどゲーム機から目を逸らさなかったのを目撃している。父親にどのような想いがあって子供達を連れてきているのか知らないが、想いははるか手前で撃ち落とされている。  もう一つは、ゴーカートのサーキット場でのこと。かの国の二人が結構勢いよく走るゴーカートで出発したのだが、当然帰ってくる時間が経っても帰ってこない。そこへあるゴーカートが帰ってきたのだが、帰ってくるなり3台のゴーカートが何かのトラブルで動けなくなっていると教えてくれた。そこは慣れたもので係りの人がそれこそゴーカートで救援に行ってくれたのだが、そのゴーカートに先導されて帰って二人が「マエノ二ツノゴーカートガ、ミゾニオチテイタ。ダカラ二リデイッショケンメイテツダッタ。アセビッショリダッタ。ニホンジンノオトコノヒト、イッパイトオッタガミンナシランカオ」と遅くなった訳を教えてくれた。「ニホンノオトコノヒトダメ」と僕は自嘲気味に言ったが、その事は二人はとうに気がついていて、日本人とは結婚しないと言っている。 外に出ればそれだけ色々な人間模様に接することが出来る。どちらも決して不快な光景ではないが、考えさせられるテーマではある。一つこぶしをひねってうなってみようかという気になったから、やはり今日訪ねたのはドドイツの森だったのだ。