消費税

 「来院5時間前の朝起床時より、頭位変換時の回転性めまいあり。天井がぐるぐる回るような感じで、じっとしていると1分以内に治まるが、寝返りなどの頭位変換を行うとまた同様の症状が出現する。頭痛、嘔吐、難聴、耳鳴りはなし。」  この文章に続いて、この患者の既往歴や身体所見が詳しく書かれている。Dix-Hallpike法を施行した。さてその後選択すべき薬剤は何かという設問にたいして医師の正答率は3%だった。  この記事を見て僕は恐いとは思わなかった。その数字でいいのだろうと思ったし、そんなものだろうとも思った。一人の医師が全ての病気の対処法を頭の中に入れておくことなど出来るはずがない。余りにも増えすぎた疾患にたいしての配慮こそが専門医制なのだから、専門外の医師が正解を出さなければならない理由はない。  薬でも同じことだと思う。医師が専門化しているのに、薬に関しては薬剤師がオールラウンドなんて不可能だ。僕なんかもう現代薬にはついていけていないから、専門薬局制を敷いて欲しい。まだどうやら漢方薬くらいならついていけるから、漢方部門専門薬剤師くらいの肩書きで仕事をさせて欲しい。  勇敢にも質問に答えた97%の医師に親近感を持つのは、僕が己の限界をよく知っているからだ。元々ごく普通の人間が、それも地を這うくらいの能力しかない人間が、スーパーマンなんてものになれるわけがない。いくら職業と言えども日々更新される情報を見落とさず聞き漏らさず更新できるはずがない。ざるのような脳みそなのだからオタクっぽく興味を持った分野だけがせいぜいの守備範囲だ。嘗ての消費税の比率のような中には所詮入れない人間だ。