助言

看護師になろうか、医学部を再受験しようか迷っている女性にあてたメール。漢方薬剤師についても質問を受けた。

 僕は現役の時は医学部を受けました。その理由は、薬局を継がなくて済むという不純なものでした。僕は5人兄弟の4番目ですが、上の3人がそれぞれ好きな道に行き、というか姉二人は昔だから短大、兄は経済、弟は薬大は無理という状況で、なんとなく僕が継がなければならない雰囲気でした。当時の薬局は物売りでしたから魅力はないけれど、時代が時代でしたから誰かが継ぐのは当たり前だったのです。
 本来僕は文系でしたので、2年生の後半から理系に代わりました。医学部への執着も何もないのですから当然落ちました。浪人してから、それこそ何も夢を持っていなかったので、なんとなく薬学部を受けて薬大に行きました。ここでもまたモチベーションがなく、5月にはもう諦めました。熱中したのは政治活動とフォークソングです。当然4年で卒業できず5年かかりました。岐阜薬科大学というのは医学部崩ればかりの学校で、1年や2年の留年は当たり前の学校でした。
 卒業して岡山大学に回されたのですが、1日で辞めました。それから無職で仕方なく一番帰りたくなかった牛窓に帰りました。そこでは結構熱心に「商売」に励みました。そのうち子供ができて、下の娘が〇〇で、その子を治したいがために多くの先輩方に頭を下げて教えを請いました。その中で僕に目をつけて下さった先輩がいて、その方の紹介で僕が30数年漢方薬を教えていただいた先生と巡り会えたのです。
 そこから人生が変わりました。漢方薬の単位が取れずに留年したのに、患者さんを前にして治してあげたいと思うといくらでも知識が入って来たのです。特に漢方薬を始めると、病院で治らない人ばかりが来られるので、それこそいっぱい勉強しました。大学の5年間遊びまくったので、遊びはもう興味がなく、ただひたすら勉強を続けました。漢方薬剤師とか漢方薬局とかの正式な資格はありません。単に好きというだけで公には通用しません。漢方を始めて35年くらいなりますが、今では毎日が楽しくて仕方ありません。インターネットのおかげで、こんな田舎で営業できるのですから。昔なら当然つぶれていますが、今はどこにいても日本中が相手なのです。医学部を落ちたこと、嫌な薬局を継いだこと、裏目裏目ばかりだったはずなのに、なぜか一番あっている職業のように思えます。僕はあなたにどの道を選ぶべきか助言できません。クリスチャンの僕が口にできるとしたら「すべてはみ旨の通り」(神の導きに従います)かな?