差し入れ

 ありがたい、ありがたい。今日は二人の方に親切にして頂いた。 休み下手なのに意を決して朝からシャッターを開けないでいた。すると9時を過ぎた辺りから数人続けて電話があった。老人の急な紙おむつの在庫切れが2件と漢方薬が丁度切れたって言う電話が2件と、ただ薬局が開いているかどうかの確認の電話が2件。  今日は一人きりだったので、何年ぶりかに自分で配達をした。僕が直接届けに行ったから依頼者はびっくりしていた。何年も会っていない人で、その衰えぶりに驚いたが、向こうも僕の老けぶりに驚いていたかもしれない。自然の摂理かもしれないが結構残酷なものだ。若い人にはその動物としての大いなる価値(健康と美しさ)に気がついて日々を充実させて欲しいなどと、まさに老人みたいなことを考えてしまう。 薬局が開いているかどうかだけ確かめた女性が、大きなおはぎと、サラダと、ゆで卵を数個持ってきてくれた。まるで僕が今日一人でいることを知っているかのようなタイミングだ。もっともこの数年届けてくれているし、卵は4個だったから、家族がそろっているものとしての行動だろう。でも今日のタイミングは有り難かった。昼はコンビニ弁当と決めていたが、夕食がこれで出来た。 午後からは、遠くのあるお寺さんのお嫁さんが漢方薬を取りに来るついでに梨とブドウをお土産に下さった。おじゅっつぁん(これって共通語なのだろうか?この辺りだと僧侶のことをこう呼ぶ)の奥さんがことづけてくれたのだが、まさか今日僕が一人で食事をし、デザートに困っているだろうなどとは想像しなかっただろう。でもこれも有り難すぎるタイミングだ。一人で食べるには多すぎるし、ブドウが緑色だから覗いてみると、シャインマスカットと書いていた。  もう随分前だが、お寺さんの奥さん方の集まりで漢方薬について話したことがある。以来、何人かの奥さん方とお付き合いが出来て、役に立たせて頂いている。奥さん方はおじゅっつぁんの陰に隠れてあまり表には出てこないが、結構出来た人物が多くて、意外と奥さんで持っているお寺さんが多いのではないかと感じたりしている。今日訪ねてきてくださったお寺さんにも、素敵なお嬢さんとお嫁さんがいて、特別な職業を特別なようには感じさせない物腰の低さがある。  東北の津波被害の後、多くの宗教者の言葉を聞いたが、圧倒的に仏教の方が多かった。人口の割合から言っても当然のことかもしれないが、語られる内容は悲しいくらい風土に合致していた。他のものでは変わることが出来ない歴史が大地に根付いていた。有名と言われる仏教者だけではなく、身近にいるおじゅっつぁん達ももっと多くを語ればいいのにといつも残念に思う。恐らく多くを学び修行もしているのだろうに、もったいないことこの上ない。信仰を競わせるようないびつなものではなく、生と死を土着の風土の中で語って欲しいと思う。  働いているのが一番体調がいいという悲しいくらいの休み下手に、差し入れ上手が二人。