助言

 薬剤師らしい品のある助言が出来たと思う。  二人の幼いお子さんを連れたある若いお母さんがいつもの漢方薬を取りに来て、漢方薬とは別の相談に乗って欲しいと頼まれた。勿論、何でも屋の僕は喜んで応じたが、運の悪いことに、同じような小さなお子さん連れの漢方相談の夫婦がやってきて、ソファーに腰をかけて待ち始めた。勿論僕が誘導して待ってもらったのだが、この状態では悩み相談は無理だと思ったので、電話かメールで具体的に悩みの内容を教えてもらう約束にした。  その夜お母さんからメールが入った。ある出来事を時系列に詳しく書いてくれていた。あるお願い事を誠意を持って受け入れてもらえなかったことに関して、相手の態度に合わせて自分も感情的になってしまったことに対して悩んでいた。僕ならあり得ない反省だが、彼女は相手に怒るのではなく、不快な感情を顔に出してしまったことを後悔していた。その後相手や、その仲間達に避けられているとも感じてストレスになっているらしかった。  僕はその文章を読んで直感的に感じたのは、相手が避けているのは口うるさい?彼女に対しての怒りではなく、「後ろめたさ」故だと感じた。怒れるくらいの人なら心情的に優位に立つから彼女を避ける必要はない。寧ろ人を避けるのはしばしば後ろめたさによるものが多い。いわゆる会わす顔がないのだ。第3者的に見て、何ら非を感じない彼女の後悔は生産的ではないから堂々と暮らしていればいいと助言した。  ただ、この種のトラブルを解決するもう一つの方法も教えた。稲ワラを拾ってきてワラ人形を作り、毎晩丑三つ時になると五寸釘を打ち付けて呪いをかけると言う方法だ。出来れば白装束で、白はちまきに割り箸2本立ててやるといい。その時に唱える言葉は「たたりじゃ~たたりじゃ~」こうすれば相手は毎晩うなされて恨みが晴れる。  お礼のメールが彼女から帰ってきたが、どうやら後者は採用しないらしい。せっかくのいい助言だったのに。