何気なく見ていた朝のテレビで面白い内容のものがあった。大阪のおばちゃんは飴のことをアメチャンと呼ぶらしいのだ。なんと6割くらいの人が飴ちゃん(アメチャン)とまるで人格を持っているかの如く呼んでいた。飴に親近感を持つようになり、実際に飴を携帯し始めるのは40歳から急増するらしいが、多くの人が飴専用の袋を持っていて、買ってきた包装から出して、自分流の携帯の仕方を考えている。また、飴はコミュニケーションの大きな武器らしくて、すぐ他人様にあげるそうだ。そうして話の糸口を掴むらしいが、図々しいおばちゃん達も結構もとは気が小さくて小道具に頼っているのが面白い。  僕が漢方薬を作っている方の多くとこのおばちゃん達は対極にいるように一見写るが、ひょっとしたら結構根は似ていて、心底気が強くて人の視線も気にならないような本当の強者はおばちゃん達の中にも意外と少ないのかもしれない。そう言えば、過敏性腸症候群にしたってウツウツにしたって、別に大阪の患者さんが少ないわけではない。例のぼけとつっこみで一日中素人漫才していたって、病む人は病んでいるのだ。幼いときから身に付いた話法も病気や性格を駆逐してくれる力にはなり得ない。懸命に飴でご機嫌をとりながらも及ばなかった人がこの種のトラブルを抱えるのか、本来的に人と交わるのが苦手な人がこの種のトラブルに陥るのか分からないが、行き着くところが同じなら、いっそ無理をせずに正直に自分をさらけ出して、決して虚飾の衣をまとうことなく、出来ればもっと低く、もっと謙遜に暮らすのがいい。本当の謙遜が身に付けば人の視線など恐くない。恐い間はその謙遜の姿にまだ無理があるのだ。  この番組を見ているときに妻がある人のことを例に出し、教会の○○さんもその通りだわと言った。大阪で暮らしていたことのあるその方によく飴を分けて頂くそうだ。飴だけでなく人格もついでに分けていただけばいいと思うが、人格までは小袋に入れては持ち歩いてくれない。真似るか盗むかしないと身には付かない。  アメチャンが好きな大阪のおばちゃんは虫歯だらけかと思うが、心に虫が食っているよりは罪がない。歯医者さんもタンスにゴンも治せない虫食いは大きな肩書きの輩により多く見られる。

追記・・・丁度書き終わったところに加古川の家族がいつものように漢方薬を取りに来てくれた。その中のお母さんが迷わず「アメチャン」と言った。今日は朝も夕も、アメチャンに心をほぐされた良い日だった。