癖だから抜けないのか、抜けないから癖なのか良く分からないが、繰り返すたびに一人苦笑いすることがある。 中学生から近眼だったから、集中すれば目をより見たいものに近づける癖がある。近くしか見えないから当然なのだが、老眼が出てきてからもつい同じ動作をしてしまう。見えにくければ目を近づける動作が何十年も身に付いていたから、遠ざける選択肢はないのだ。今ではのけぞるようにして距離をとるとピントがあったりするものだから、学習できない自分につい苦笑いをしてしまう。  今日県北から訪ねてきてくれた若いお母さんと話していて、人生そのものも、この近視眼で生きてきたように思えた。この年齢になったからこそ少しは教訓じみたことも言えるが、そのお母さんと同じ年齢の頃、僕自身が話した内容のように暮らせていたかというと心許ない。若い頃とそんなに価値観が変わってはいないからとんでもない豹変はないと思うが、なにぶん当時は圧倒的に経験が少ないから、教科書のように教訓を並べる立場にはなかった。あの頃、のけぞるように対象と距離をとって眺める癖がついていたら僕の人生も何かしらの目的地に向かって歩む日々だったのにと思う。