朝夕のシャッターの上げ下ろしは手作業だ。シャッターと僕が古くなったせいで、なかなかの重労働だ。腰を入れて注意深くしないと、腰を傷めそうだ。上げ下ろしに使う鈎がついた棒は、夜の間は柱に立てかけている。  今朝いつものようにシャッターを開けようとして決まった動きを始めた。まずシャッターの両サイドについている鍵を外す。その鍵も壊れかけていて、容易ではないのだがまだ何とか努力すれば使える。そしてその後は、先ず腰を入れシャッターを僕の背の高さ位なところまで持ち上げる。そこの段階でおもむろに柱に立てかけている棒を持ち、シャッターを天井まで押し上げる。  ところが今日に限っていつもと違う。鈎がついた棒を持とうとしたら、なにやら抵抗があるのだ。いつもなら目もくれずに同じ動作を繰り返すだけなのだが、さすがに棒が何かに引っ張られているような感じがしたので見てみた。すると1m50cmくらいある棒の下の部分に蔓(つる)が絡まっていた。下30cmくらいのところまで細い蔓が絡まっていた。だから抵抗があったのだ。それが分かったので強く引っ張ると簡単に棒は抜けた。   ただ僕がその棒を置いたのは昨夜7時半だ。それが今朝シャッターを開けようとしたのが8時半だから、わずか半日の間に蔓は延びたことになる。もともとシャッターの傍に生えている植物は、娘が買ってきた観葉植物だ。それに蔓があることなど知らずに、植木鉢の近くに無造作に棒を立てかけていた。すると夜の間に蔓は棒を見つけ、ちゃっかり天高く伸びていこうとしたことになる。太陽の光で光合成をしなければならないから、あの手この手で光を求めようとする知恵が、他人(木)を利用する方法を編み出したのかもしれない。触覚があるわけでもないし、どうしてそこに利用すべき木があることが分かったのだろうと、不思議でならない。そして一晩で延びた蔓の長さに驚いた。なんていう生命力だ。まるで意思を持った生き物のように感じた。