睡眠

 思えば伏線はあった。気がついてはいたが、僕は壁にぶつからないと行動できない人間だ。嘗て同じような経験をしているのだが、今回も教訓にはならなかった。  昨日仕事を始めた頃から、喉の軽い痛みと倦怠感を覚えていた。薬を飲んで普段どおり仕事をこなしていたが、予想に反して症状がどんどん進んでいった。昼過ぎから倦怠感で仕事が辛くなった。でも薬で抑えて仕事をすることはしばしばだから何とかなると高をくくっていた。だけどシャッターを降ろす頃には、倦怠感がピークに達し、そのまま布団に直行した。  僕がそんな時間から寝ることなど無い。毎晩11時頃に布団に入る。仕事が終わっての数時間は僕にとって大切な時間でもある。だから僕にとってはよほどの体調だったのだ。布団に入ってすぐに眠りについた。結局、今日の午後6時まで、時々僕でしか対応が出来ない人で呼ばれた時間以外は、布団の中にいた。22時間布団を基地にしたことになる。  話を伏線に戻すが、実はこの2ヶ月、全ての休日をかなりハードに過ごしていた。かの国の帰国組を色々なところに精力的に案内したことが大きな原因だが、案内して帰った後、普段では感じられない疲労感に襲われていたのだ。勿論、一晩眠れば回復はしていたが、この程度のことでと、自分でも不思議だった。疲労が着実に積み重なっていることに気がつくべきだった。一気に堰を切ったように昨日襲ってきたが、毎日の睡眠時間を増やしておくべきだった。  結果的に患者さんやスタッフに迷惑をかけてしまったが、今回得たものがあるとすれば「睡眠(横になること)は薬より良く効く」と言うことだけだ。