床暖房

 面倒だから、スリッパを履かずに上がり込んだのだが、すぐに足の裏が温かいことに気がついた。これがかの有名な床暖房かと尋ねたらやはりそうだった。何処まで温かいのだろうと足を滑らして歩き回ると階段の上がり口まで温かかった。リビングとキッチンに床暖房が張り巡らされているらしい。数時間そこにいたのだが、足の裏が暖まるだけで寒さに対しての抵抗がかなり軽減されることを実感した。下手にエアコンをつけられると温かすぎて気持ちが悪いくらいだった。 心臓から遠いところ、まして心臓から下は確かに暖まりにくい。特に大人は足が長いからその間で血液が冷えて、身体全体を冷やしてしまう。そう言った意味では、一番冷えるところを温めるのだから健康面では理にかなっている。どのくらいの費用を上積みすればその設備を備えられるのか分からないが、まさかまだ標準装備とは言えないのではないか。よその家にお邪魔する機会が少ないから、初めての経験だったが、薬局で毎日沢山の人との会話する中でその設備の話が出てきた経験は今のところない。 真冬なのに上着を着てはおれない。薄着とまではいかないが、1枚分の服は我が家より着なくてすむ。これだけ快適に暮らせれば自然への抵抗力は養われにくいだろう。快適で得るものは大きいが、失うものも恐らくある。そしてその中で一番大きいものは、その快適さの何分の一すら手に入れれない人達が社会にはわんさといて、色々な不快に、色々な苦痛に日々耐えている人達がいることに思いが至らないと言う点だろう。幸せに、幸運に水を差すつもりは全くないが、お金では決して手に入らないものたちに価値を感じられる人であり続けて欲しい。